賃貸不動産業界には「AD」という制度があり、普通に部屋探しを進めている限りまず目にすることはないでしょう。
しかし、オーナーや不動産会社にとってはとても重要な役割を担っており、知識の一環として取り入れておけば、より賃貸物件の理解が深まるのです。
借りる側がADを利益として得られるわけではありませんが、業界の裏事情を知っておくに越したことはありませんね!
そこで本記事では、賃貸ADの仕組みや仲介手数料との違いについても解説します。
- 賃貸ADは仲介手数料とは異なる報酬
- 元付業者に支払うか、客付け業者への追加報酬になる場合もある
- 高額ADの物件へ誘導してくる不動産会社には注意が必要
今回はオーナー目線の注意点についても解説するので、ぜひ参考にしてくださいね。
賃貸ADとは不動産会社に支払う広告料
ADは「Advertisement」の略称であり、オーナーから不動産会社へ支払う広告料を意味しています。
- 入居希望者を物件に案内する対価
- 申し込みの受付やその他手続きに関する費用
一方、ADは「客付け業者への追加報酬」として活用できる側面もあり、どちらかといえばこちらの方が主流な運用方法といえるでしょう。
オーナーから物件の賃貸募集・管理を任される不動産会社を「元付業者」と呼び、申込人を連れてくる方は「客付け業者」とされています。
たとえば、「AD100%」とマイソクに明記された物件を仲介すれば、客付け業者は仲介手数料に加えて、オーナー側からも家賃1か月分のAD(広告料)が手に入るのです。
- オーナー:自分の物件が早く決まりやすい
- 元付業者:客付け業者に支払わなければ収益が増える+早く物件が決まる
- 客付け業者:仲介手数料にプラスして報酬がもらえる
実際のところ、申込人にこれといったメリットはないものの、知識の一環として身につけておくと良いですね。
仲介手数料とは異なる報酬
広告料として支払われる賃貸ADは、仲介手数料と完全に異なる報酬となっています。
- 仲介手数料:賃貸物件を仲介した業者に対する報酬
- 賃貸AD:仲介手数料だけでは賄えない時に支払う報酬or客付け業者への追加報酬
上記の通り、たとえ賃貸ADが設定されていても、仲介手数料は変わらず発生するので、オーナーにとっては負担増、不動産会社は収益増、という構図が成り立ちますね。
- オーナー:仲介手数料に加えて負担が増す
- 元付業者:仲介手数料とは別に報酬がもらえる
- 客付け業者:(ADがもらえる物件なら)仲介手数料に加えて報酬が得られる
もちろん、オーナーとしては客付け業者が張り切って借り手を連れてきてくれるメリットもあるため、一概に負担ばかりがつのるわけではありませんよ。
仲介手数料は最大で家賃1か月分+消費税と定められているので、それ以上の報酬を設定する時に賃貸ADを使うイメージですね。
賃貸ADの相場
賃貸ADは、仲介手数料のような上限が定められておらず、時期や物件の条件によって変動します。
具体的に、不動産業界全体のニーズが高まる1~3月は、ADを設定するまでもなく物件が埋まる一方、7~8月の閑散期に入ると「早く物件を決めたい」という思惑から、高額なAD付きの募集が増えてくる傾向です。
- 1~3月:ADの必要性が低い
- 7~8月:家賃1~2か月分のADが付いた物件がでやすい
また、物件の条件による相場は以下の通りであり、「長期的に人が入らない」「新築マンションなので早く埋めたい」といったケースが多い印象となっています。
- 駅から遠い・築年数が古いといった条件が悪い物件:AD1~2か月分
- 新築マンションで早く部屋を埋めたい:AD1~3か月分
もちろん、オーナーが「ADをつけたい」と望めばどんな物件でも適用されるので、上記はあくまでも参考程度に捉えておくと良いでしょう。
条件がいまいちな物件は閑散期ほどADが付きやすい、という考え方もできますね!
賃貸ADの注意するべきポイント
賃貸ADは様々なメリットを持った報酬ですが、もちろんいくつかの注意点も存在します。
ここからは、オーナーと借り手両方の側面から解説するので、ぜひ参考にしてください。
オーナーが注意するべき賃貸ADのポイント
まずは、オーナーが注意するべき賃貸ADのポイントを確認しておきましょう。
- 本来不要なADを催促する不動産会社も存在する
- ADの運用方法をチェックする
現在物件を貸し出している方や、将来的にオーナーになる予定がある場合もしっかり把握しておいてくださいね!
本来不要なADを催促する不動産会社も存在する
賃貸ADはオーナーにとってもメリットがある一方、本来必要ないような物件でも勧めてくる不動産会社には注意しなければなりません。
- 1か月に数件は内見が入っている
- 都心部で十分なニーズが見込める
- 室内設備などADではカバーできないポイントに問題を抱えている
また、繁忙期であればそもそもADを付ける必要性は低いので、「ADを付けた方が早く決まりますよ」といった誘いは一旦断り、内見の件数などから市場の反応を見るのがおすすめです。
ADを報酬としてではなく、戦略的に活用してくれる不動産会社を選びたいですね。
ADの運用方法をチェックする
賃貸ADの導入を決めた後は、きちんと取り決め通りに運用されているかも確認しましょう。
たとえば、オーナーは客付け業者に1か月分支払う認識でも、実際は0.5か月分を元付業者が懐に収め、残りの分しか客付け業者に支払われないケースがあります。
客付け業者の旨味がなくなり、オーナーが期待する効果も得られませんね。
一方、この問題は比較的簡単に解決できるため、あらかじめ以下の対策を実践してみてください。
- 業者向けに公開しているマイソクを見せてもらう
- 証拠が残る形でストレートに確認してみる
業者向けのマイソクには「AD〇〇%」と記載されているはずなので、不動産会社によっては見せてもらえるかもしれません。
ただし、基本的には非公開となることから、ダメ元の精神で聞いてみましょう。
対して、証拠が残る形でストレートに確認すれば、営業担当も下手な嘘をつくわけにはいかず、取り決めを守らせる抑止力になるはずです。
ストレートに確認する時は、メールなどで質問して後から確認できる形に残すのがおすすめです!
借り手が注意するべき賃貸ADのポイント
賃貸AD自体はあまり借り手に関係がありませんが、客付け業者が高額なADの物件に誘導してくるケースには注意しなければなりません。
- 借り手の希望をあまり聞いてくれない
- ADが高いであろう物件を良く見せようとする
そのため、もし不安なら複数の業者へ同時に問い合わせて、できる限りフラットな意見を提示してくれるところを採用するのもおすすめですよ。
不動産会社は申し込みを入れない限り1社に絞る必要はありません!相見積もりと同じ感覚ですね!
賃貸ADとは仲介手数料とは異なる報酬の1つ
本記事では、賃貸ADの仕組みやメリット、注意点についても解説してきました。
- オーナー:自分の物件が早く決まりやすい
- 元付業者:客付け業者に支払わなければ収益が増える+早く物件が決まる
- 客付け業者:仲介手数料にプラスして報酬がもらえる
一方、高額なADが付いている物件に誘導してくる客付け業者も稀に存在するため、複数の不動産会社に問い合わせるようにしましょう。
偏りのないアドバイスを提示してくれるところを選んでくださいね!