賃貸契約時に必要な初期費用は、概ね家賃の5〜6倍が相場とされています。ただし、引っ越し費用や家具家電といった生活用品まで揃えるとなれば、必要コストはそれ以上に膨れ上がってしまうでしょう。
しかし、値下げしてもらうにしても、「交渉が難しそう」「素人にはできない」と感じて、諦めてしまう方も少なくありません。
そこで本記事では、賃貸初期費用を交渉するタイミングやコツを解説します。値下げ交渉は、いくつかのポイントを掴めば成功確率が大幅に高まるため、ぜひ参考にしてください。
賃貸初期費用の交渉タイミングは大きく分けて2回
まず結論として、賃貸初期費用の交渉タイミングは大きく分けて2回となっており、下表の中でも「礼金」と「仲介手数料」が狙い目です。
初期費用項目 | 大まかな内訳 |
敷金 | 家賃の1〜3ヶ月 退去精算金(原状回復)のためのオーナーへの預け金。 原状回復費用と相殺して余れば返金される可能性がある。 |
礼金 | 家賃の1ヶ月~3か月 オーナーへ収める「お礼金」であり、原則として返金されない。 |
前家賃 | 入居翌月分の家賃。 |
日割家賃 | 家賃1か月分を日割りした費用であり、月の途中で入居した場合に発生する。 |
仲介手数料 | 不動産会社への報酬となり、家賃0.5〜1ヶ月が相場。 |
賃貸保証料 | 家賃保証会社に支払う保証料であり、家賃0.5〜1.5ヶ月が目安となる。 |
火災保険料 | ほとんどの場合は1万〜2万円で収まる一方、加入は必須。 |
鍵交換代 | 入居者が使用していた鍵を取り替える際に1万~2万円かかる。 |
あくまでも不動産会社は「敵ではない」ため、ここで解説するタイミングを見計らって、相談するような気軽な気持ちで交渉してみましょう。
最初のタイミング:内見終了後
内見時には営業担当が物件の資料を持参し、そこには必ず「初期費用」が記載されています。このタイミングでしっかり各項目に目を通して、値下げしてほしい旨を遠慮なく伝えてみてください。
そして、「すごく気に入った」「ここに住みたい」という気持ちをアピールすれば、成約見込みの高い顧客として認識されるため、より成功率がアップするでしょう。
2度目のタイミング:契約の直前
内見を経た後に、「契約書申込書を書いて終了」という段階が2度目にしてラストチャンスです。
ただし、自分のサインを入れてしまうと、契約内容に合意したことになってしまうため、1文字も書いていない状態を保ち、最後の相談として値下げ交渉にチャレンジしましょう。
もし可能であれば、「この項目さえ安くしてもらえれば借りたいのだけれど…」という言葉も、さりげなく織り交ぜてみてください。
賃貸初期費用を抑える4つのコツ
ここからは、賃貸初期費用を抑えるコツを3つ解説します。
- 礼金は最初に交渉すべし
- 仲介手数料は半額を目指してみる
- 閑散期を狙う
- 初期費用の分割払いも検討する
少しでもお得に物件を借りるためにも、ぜひ参考にしてください。
礼金は最初に交渉すべし
もし借りたい物件に礼金が付いている場合は、最初に交渉を検討した方が良いでしょう。
空室期間を長引かせるより、礼金を少々値下げして契約を進めたいと考える不動産会社も多く、オーナーを説得してくれる可能性があります。
たとえ値下げしたとしても、営業担当にとっては特に損失にはならないため、交渉する側も気軽に相談してみるのがおすすめです。
仲介手数料は半額を目指してみる
仲介手数料は不動産会社の大切な収入源となり、もちろんあまり値下げしたくない項目となります。しかし、自社管理の物件ならオーナー側からも1か月分を得ているケースが多いため、借り手側を0.5か月分にまでディスカウントしても、実は十分な利益が取れるのです。
そのため、物件によっては交渉余地のある項目であり、賃料の高い部屋ほどコストダウンの幅は大きくなるでしょう。
閑散期を狙う
不動産業界は例年7月~8月が閑散期とされており、この時期は物件の流通量はもちろん、顧客も目減りする傾向です。
したがって、不動産会社とオーナーは「大切なチャンスを逃したくない」というバイアスが働くため、初期費用の値下げ交渉が通りやすくなります。一方、選べる部屋自体が少ないデメリットもあることから、設備よりも低コスト重視な方におすすめといえるでしょう。
初期費用の分割払いも検討する
初期費用は契約時に一括で支払うのが原則ですが、キャッシュレス化が進んでいる近年は、クレジットカードの分割に対応してもらえるケースもあります。
利息などを考慮すれば、トータルコストは増えてしまうものの、まとまった資金を持ち出したくない場合は、有効な選択肢の1つです。ただし、どの不動産会社でも利用できるわけではないので、あらかじめ営業担当に確認しておいてください。
初期費用の値下げ交渉に応じてもらえない3つのパターン
不動産物件には、様々な値下げ交渉のポイントがある一方、どうしても成功する見込みが薄いパターンも存在します。
- 繁忙期(12月〜3月)
- 新築物件や人気物件
- 自社管理ではない物件
どれだけ努力しても、時間ばかりを浪費する結果になりかねないので、事前に把握して無駄なく立ち回れるようにしておきましょう。
繁忙期(12月〜3月)
学生や新社会人の引っ越しが重なる12月~3月は、賃貸物件と顧客が溢れかえる繁忙期となっています。すなわち、1つの物件を巡った早い者勝ちが頻発し、オーナーと不動産会社は「そもそも値下げ交渉に応じる必要がない」のです。
むしろ、あまり根気よく交渉し続けると、正規価格で成約してもらえる方を優先されてしまうため、時期をずらせないのであればコスト度外視のスピード重視で動かなければなりません。
新築物件や人気物件
新築物件や1~2年程度の築浅、お洒落な仕様のデザイナーズマンションなどは、あえて価格を下げなくても自然と申し込みが入ります。
そのため、値下げ交渉の成功率は極めて低く、やはり不動産会社側が提示する金額で借りる方が優先されるでしょう。
一方、新築物件によっては「早く部屋を埋めたい」というオーナーの意向で、AD(広告掲載料)という不動産会社への報酬が別途支払われるケースがあり、仲介手数料の10~20%ほどなら譲歩してくれるかもしれません。
もちろん、成功確率がとても低い点には注意が必要ですが、ダメ元で相談してみるのもおすすめです。
自社管理ではない物件
不動産業界における「自社管理」とは、媒介契約を結んでオーナーの代わりに集客、管理を行う形態を指しています。
対して、先ほど触れたレインズやATBBを介して顧客を案内する会社を「客付け業者」と呼んでおり、こちらは基本的に仲介手数料しか収益源がありません。
そのため、手数料の値下げ余地があまりなく、礼金などを抑えたくても、管理会社を経てオーナーに伝えてもらうしかないのです。すなわち、客付け業者は立場上、交渉力が強くないので、初めから自社管理物件が多い不動産会社を狙った方が良いでしょう。
賃貸初期費用の交渉はタイミングが大切
本記事では、賃貸初期費用の交渉タイミングや成功させるコツ、見込みが薄いパターンを解説してきました。
賃貸初期費用には様々な項目がありますが、その中でも「礼金」「仲介手数料」は値下げの余地があり、閑散期を狙うことでより成功率を高めることが可能です。
一方、繁忙期や築浅は「交渉している間に申し込みが入る」ケースも少なくないため、本記事を参考に、適切な物件とタイミングを見極めながらチャレンジしましょう。